静電塗装機を使いこなそう!効率的に使う方法や長く使うコツを紹介
「静電塗装機を導入したいけれど、本当に効率が良くなるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
静電塗装は一般的なエアースプレーでの塗装と比べると、塗着効率が格段に上がり、塗料節約・作業効率改善に繋がる塗装方法です。
本記事では静電塗装機をより効率的に使う方法について動画を交えて紹介しています。
おすすめの静電塗装機や導入事例も紹介していますので、静電塗装機が気になる方は必見です。
目次
静電塗装とは?
静電塗装とは、塗料をマイナス極に帯電させることによって、ワークへの塗着効率を上げる手法です。
一般的なエアースプレーでの塗装は塗着効率が20〜30%と言われていますが、静電塗装の場合は最大85%と大幅に改善できます。
例えば、円柱型のワークを塗装することを考えてみましょう。
一般的な塗装の場合、前後左右上下、計6方向からの塗装が必要になります。
一方で、静電塗装では、静電気の巻き込みの力で側面・裏面にまで塗料が回り込むため、塗装の工程数の削減・塗料の節約に大きく貢献します。
下記は一般的な塗装と静電塗装の比較です。
円柱型の塩ビパイプにアルミホイルを巻いてテストしました。
一般的な塗装の場合、一回の塗装工程では、アルミホイルを巻き付けたパイプの正面部分しか塗装されません。
一方で、静電塗装の場合はアルミホイル全面、つまりパイプの裏側まで綺麗に塗装できています。
左側写真:一般的な塗装 右側写真:静電塗装
静電塗装の原理など基礎的な内容を知りたい方は、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
参考記事:静電塗装で作業時間とコストを圧縮!メリットと具体的事例を解説
静電塗装機をより効率的に使う方法
塗装時間と塗着効率で大きなメリットがある静電塗装機は、以下を意識することでさらに効率よく塗装を行うことが可能です。
- 電圧を調整する
- ノズルチップを最適化する
- 鉄板の上で作業する
それぞれの特徴を確認していきましょう。
電圧を調整する
静電塗装は塗装機にマイナスの高電圧をかけることで、塗料を帯電させています。
静電気と聞くと小さな電圧を想像される人もいるかもしれませんが、静電塗装機に供給される電圧は30kV~80kV(30000V~80000V)と非常に大きな値です。
この電圧値を調整することで、ワークへの塗料の付き方が変わってきます。
以下3つの動画を見れば一目瞭然です。
①静電なし
②30kV
③80kV
このように電圧が高ければ高いほど塗料がワークに付きやすいことがおわかりいただけると思います。
ただし、ワーク形状によっては電圧が高すぎると塗りたいところに塗料が届かないという問題も起きかねません。
帯電した塗料はワークの近いところに付く性質があります。
複雑な形状のワークであれば、あえて電圧を落とすことでムラのない塗装が可能です。
ノズルチップを最適化する
静電塗装機はガンの先端に付けるノズルチップによって塗装効率が大きく変わります。
ノズルチップは角度や幅、吹き出し部の口径などで無数の種類がありますが、選定を誤ると静電塗装機のメリットが活かせません。
例えば、細長いワークを塗装するのに、吹き出し口の口径が大きく、幅広に塗料が出るノズルチップを使っていれば、いくら静電塗装とは言え、付着しない塗料が出てくるでしょう。
ノズルチップをワークに合わせて最適化することで、より効率的な静電塗装が可能となります。
鉄板の上で作業する
静電塗装を行う際は、鉄板の上に立って作業することで、ワークへの塗料の付きが良くなります。
少し難しいですが、体から鉄板にかけて静電気を流すことで、作業者が帯電しなくなるとイメージしてください。(アースを取っているイメージ)
これによって作業者の周りに電気が溜まりにくくなり、塗料がワークに効率よく向かっていきます。
静電塗装機を長く使うコツ
静電塗装機は一般的なエアースプレーよりも高額のため、できるだけ長く使いたいと考える人も多いでしょう。
以下は基本的なことですが、正しく実践することで静電塗装機をより長く使用できます。
- 使用後はキレイに洗浄する
- 定期的にオーバーホールを行う
- パッキンなどの消耗部品を定期的に取り替える
静電塗装機の交換目安は購入から※大体10年ですが、上記の作業を怠ってしまうと、早期に交換タイミングがきてしまう可能性もあります。
車と同じで定期的なメンテナンスと入念な洗浄が機械の寿命を伸ばすコツです。
※静電塗装機の交換時期は使用する塗料や使用頻度によって大きく異なります。
おすすめの静電塗装機
画像:日本ワグナー・スプレーテック「塗装ガン:GM5000EAC」
静電塗装機のメーカーは数社ありますが、ドイツに本社を置く塗装機器メーカーWAGNERの日本法人である「日本ワグナー・スプレーテック」の製品をミドリ商会では推奨しています。
金属加工業のお客様であれば、以下の組み合わせで使用されることがあります。
エアコートユニット:P28-40EAC
【内訳】
- 塗料供給ポンプ:Puma28-40
- 塗装ガン:GM5000EAC
- コントローラー:VM5000
- 塗料ホース10m
塗料飛散をより抑え、かつ美粧仕上げを可能にするエアコートテクノロジーです。
参考価格は上記一式で約150万円(2025年1月現在)となります。
決して安価なものではありませんが、現状の塗装工程の改善に役立つシステムですので、気になる方はぜひ一度ご検討してみてください。
静電塗装の具体的な事例
WAGNERは静電塗装の分野で多くの導入実績があります。
静電塗装の一例として、農機や建機に使用される大型の油圧シリンダーを塗装する会社は、WAGNERの静電塗装システムを導入したことにより、塗装作業効率が大幅に改善し、月~土曜の3シフト制から月~金曜の2シフト制になりました。
参考記事:WAGNER導入事例『油圧シリンダーの効率的な液体塗装』
静電塗装機は日々進化している!
静電塗装自体は新しいテクノロジーではありませんが、日々進化しており、より効率的な製品が続々と誕生しています。
塗料が年々高くなってきている昨今、材料節約、作業工程の簡略化を考えてらっしゃる方には、今が見直しのタイミングかもしれません。
もし静電塗装機にお困りであればミドリ商会までご相談ください。
お客様の現状をヒアリングさせていただき、最適な静電塗装システムをご提案します。