溶接ヒュームの測定が義務化!測定方法や対策を解説
「溶接ヒュームが法改正で特定化学物質になったと聞いたけれど、何をすればよいかわからない…。」とお困りではありませんか?
アーク溶接で発生する溶接ヒュームは作業者の健康被害を引き起こす可能性があり、適切な対応が必要です。
この記事では、現場での溶接ヒュームの測定方法や作業者の健康を守る対策についてわかりやすく解説します。
目次
溶接ヒュームとは?
溶接ヒュームはアーク溶接の熱によって溶かされた細かな金属の粒子で、白い煙のように見えます。
発がん性があるマンガンが含まれており、作業者の神経障害を引き起こす可能性がある物質です。
溶接ヒュームが発生するアーク溶接の種類には以下があります。
- 被覆アーク溶接
- TIG(ティグ)溶接
- 炭酸ガス溶接
- ガウジング
溶接の種類の中でもメジャーであり、溶接作業と溶接ヒュームは切っても切れない関係だといえるでしょう。
2021年の法改正で決まったこと
画像引用:厚生労働省「金属アーク溶接等作業を行う事業者の皆さまへ」
2021年に特定化学物質障害予防規則(特化則)が法改正されて、溶接ヒュームが特定化学物質に指定されました。
作業環境測定の実施など特化則の一般的な管理と同時に「溶接ヒュームの個人ばく露測定」と「適切なマスクの着用」が義務付けられたのが特徴です。
法改正により、溶接ヒュームが発生する現場(鉄工所や製缶屋)は2022年3月までに対策を実施する必要がありましたが、実際は対応できていない現場も多いのではないでしょうか。
法律で定められているため、未対応の場合は労働基準監督署が立ち入った際に指摘を受ける可能性もあります。
労基の指摘を受けないためにも、以下で説明する溶接ヒュームの測定を行い、適切な対策を講じるようにしましょう。
溶接ヒュームの測定方法
溶接ヒュームの個人ばく露測定は、作業者の呼吸域の近くに測定器を付けてサンプルを採取して行います。
実際の測定現場は下記の動画で解説していますので、あわせてご確認ください。
◆参考動画:溶接ヒューム濃度測定の測定現場に潜入!
個人ばく露測定は1人だけ行えばよいのではなく、溶接の種類に対して2人以上の測定が必要です。
(例)被覆アーク溶接:10名、TIG溶接:5名の事業所で作業時間8時間の場合 被覆アーク溶接の作業者2名以上、TIG溶接の作業者2名以上で8時間サンプル採取を行う |
サンプルからマンガンの含有量を計測します。国が定める基準値は0.05mg/㎥です。
1回目の個人ばく露測定で基準値以内であれば問題なく、基準値以上であれば2回目の測定が必要となります。
溶接ヒューム濃度測定の詳細については以下の商品ページをご確認ください。
勘違いされやすいのが、マンガン含有量が0.05mg/㎥以上の対応です。
溶接ヒュームの個人ばく露測定はあくまで作業者が装着する保護マスクの選定のために行います。
2回目の測定で基準値以上でも、溶接ヒューム自体の濃度を下げる必要はありません。(もちろん濃度が下がるに越したことはありませんが…。)
溶接ヒュームの対策
溶接ヒュームは作業者の健康に関わります。以下の対策を講じることで、溶接ヒュームが引き起こすリスクを軽減可能です。
- 換気装置や送風機を使う
- 大型換気扇を導入する
- 集塵機を使う
- 適切なマスクをつける
それぞれを確認していきましょう。
換気装置や送風機を使う
溶接作業を行う際に換気扇や送風機を使って、溶接ヒュームを飛ばせれば作業者がばく露するリスクが軽減します。
作業者の横に扇風機を置く方法をイメージしてもらえればわかりやすいでしょう。
ただし、溶接ヒュームを飛ばすことによって、溶接作業者以外の人が溶接ヒュームを吸ってしまうリスクが高まります。
もしこの方法を実践する場合は、他の作業者や風向きに注意が必要です。
大型換気扇を導入する
換気装置や送風機と同じ考えですが、『大型換気扇Y600D』は、1時間あたり20回の空気を入れ替えることによって、作業者付近の溶接ヒューム濃度を大幅に低減します。
溶接ヒュームだけではなく、溜まった熱気を現場からすばやく排出するため、夏場の暑熱対策にも貢献する装置です。
下記の動画のように流体シミュレーションを行い、最適な配置をご提案します。
『大型換気扇Y600D』の導入による溶接ヒューム濃度の変化については、以下の商品ページに詳細を掲載していますので、ぜひご確認ください。
集塵機を使う
発生した溶接ヒュームを吸ってしまうのも対策の1つです。
比較的高額であり、フィルター交換などの手間はかかりますが、溶接ヒュームの濃度低減には大きな効果を発揮します。
ミドリ商会では上の写真のような溶接ヒューム用集塵機を扱っていますので、気になる方はお問い合わせください。
マスクをつける
一番現実的な安全性を高める方法は、作業者が適切な保護マスクを装着することです。
個人ばく露測定を行えば、溶接ヒュームの濃度がわかります。
その濃度に応じて、保護マスクの適切なフィルター性能を選定しましょう。
2023年4月にはマスクフィットテストが義務化されました。
フィルター性能だけでなく、作業者1人ひとりに適したマスクかどうか確認が必要です。
マスクフィットテストについては、以下の記事でも詳しく紹介していますのであわせてご確認ください。
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■参考記事:マスクフィットテストについて|測定方法や費用を紹介
■サービス詳細ページ:「マスクフィットテスト」
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2026年10月1日からの法改正について
2026年(令和8年)10月1日から溶接ヒュームの濃度測定に関する改正特化則が施行され、個人ばく露測定の実施者の要件が明確化されます。
具体的には第一種作業環境測定士など専門的な知識を有しており、個人ばく露測定の講習に合格した者でしか対応できなくなるという内容です。
これまで特別な資格を持っていない人でも測定できましたが、法改正以降は専門家による対応しかできなくなるため、各社で測定に掛かる費用が高騰する可能性があります。
まだ溶接ヒューム濃度測定を行っていないのであれば、早めに行いましょう。
まずは溶接ヒュームの現状を確認しよう
特化則の法改正により、溶接ヒュームの現状を把握して適切に対応することが事業者に求められるようになりました。
まずは溶接ヒュームの個人ばく露測定を行い、現状を確認しましょう。
ミドリ商会では、作業環境測定士による溶接ヒュームの測定を提案できます。
1種類の溶接作業で2人の測定であれば、10万円程度からご提案が可能です。(測定場所や条件によって多少前後します。)
溶接ヒュームの現状把握をしたい方は、ぜひ一度ミドリ商会までお問い合わせください。
