化学物質のばく露量の確認が健康被害を防ぐ!各種方法を解説
「有機溶剤を取り扱っているけど、現場でどれくらいの濃度になっているかはよくわからない…。」
職場での健康被害を防ぐためには、有機溶剤などの化学物質を濃度基準内で使用することが大切です。
本記事では『化学物質管理者講習テキスト』の第5章に基づき、化学物質のばく露量による影響や、測定方法についてわかりやすく解説しています。
化学物質の無害と有害の境界
ルネサンス期の有名な医師であるパラケルススが残した言葉に「すべての物質は毒である。
毒でない物質は存在せず、毒になるか薬になるかは用いる量に依存する。」というものがあります。
この言葉は有害性を服用量(ばく露量)として捉えており、ある化学物質の有害性を調べる場合、以下2つの関係が重要です。
- 量ー影響関係:化学物質のばく露量が増えるほど、健康への影響が大きくなる
- 量ー反応関係:化学物質のばく露量が増えるほど、影響を受ける人が増える
例えば、濃度0.03ppmの硫化水素を吸入した場合は「卵の腐った臭い」を感じる程度ですが、50~100ppmになると気道刺激を受けるなど、ばく露量が増えると健康への被害が大きくなります。(量ー影響関係)
動物実験での死を例にすると、ある化学物質でばく露量がゼロの場合は1匹の動物も死にませんが、ある濃度を超えると死ぬ動物が表れ、どこかで全ての動物が死ぬ濃度に達します。(量ー反応関係)
化学物質の無害と有害の境界を表すのが閾値(いきち)です。
閾値は反応率がゼロとなるばく露量を表すもので、動物実験で考えると1匹の動物が死なないばく露量のことを指します。
化学物質の危険性や有害性を知り、現場でのばく露量を監視することが、労働災害を防ぐためのポイントです。
化学物質のばく露量を確認する方法
化学物質のばく露量を確認する方法は、主に以下の3つです。
- 作業環境測定
- 個人ばく露測定
- 生物学的モニタリング
それぞれを少し掘り下げて確認します。
作業環境測定
作業環境測定とは作業環境の実態を把握するために行われるサンプリングと分析です。
屋内で有機溶剤を取り扱う事業者には、労働安全衛生法で作業環境測定の実施が義務付けられています。
有資格者である「作業環境測定士」が有機溶剤の種類や対象物質の使用量をヒアリングして、現場をサンプリングします。
サンプリングによって第1から第3管理区分のいずれかに評価が決定し、評価結果によってその後の対策が決まります。
ミドリ商会では作業環境測定の対応が可能ですので、詳しくは以下をご覧ください。
個人ばく露測定
個人ばく露測定とは、従業員個人が実際に吸入する化学物質の濃度や量を測定する方法です。
作業環境測定は現場全体の状況を測定するものですが、個人ばく露測定は個人がどの程度化学物質にばく露しているか評価するために行われます。
化学物質が人体に取り込まれる経路には、経気道・経口・経皮がありますが、労働環境においては経気道からの取り込みが最も多いため、呼吸域の空気を捕集・分析するのが一般的です。
化学物質は濃度基準値を超えると健康被害に直結しやすくなるため、職場環境全体の濃度を基準値以下にするか、適切な保護具を従業員に着用させることで濃度基準値以下にする必要があります。
生物学的モニタリング
血液や尿などの試料を使って、化学物質へのばく露量や影響の程度を調べるのが生物学的モニタリングです。
「生物学的許容値」と呼ばれる指標に基づき、作業環境の改善をするべきか否か判断されます。
生物学的モニタリングでは、化学物質の人体への取り込み量によって以下3つの分布に分けられます。
- 分布1:化学物質の取り込みは少なく、作業環境の現状維持が望ましい
- 分布2:化学物質の取り込み量が比較的多いので、職場改善が望まれる
- 分布3:化学物質の取り込み量が相当量に達しているので、職場改善の措置が必要
あくまで生物学的モニタリングは作業環境の改善の要否を判断するものなので、分布と人体への影響は直接的に関係しませんが、取り込み量が多い場合には従業員の健康への影響についても検査を行いましょう。
総合的な評価ができるリスクアセスメントが重要!
化学物質はばく露量が増えるほど危険性や有害性が増します。
まずは職場で化学物質をどれだけばく露する可能性があるのか、作業環境測定や個人ばく露測定を行い、現状を把握することが大切です。
化学物質における職場の総合的な評価はリスクアセスメントを行うことで判断できます。
膨大な労力がかかる作業となりますので、工数が取れないという方は、ミドリ商会がご提供する『リスクアセスメント代行パッケージ』をご利用ください。
専門業者でのリスクレベルの把握や報告書作成、従業員への周知の代行など、トータルで対応いたします。