化学物質による労災は「知る」ことで防げる!予防のポイントを紹介
「特化則や有機則の対象物質の管理は万全だから安全な環境!」と考えている人もいるかもしれません。
実は特化則や有機則で規制されている物質以外にも有害な化学物質は星の数ほどあり、従業員を化学物質による労働災害から守るために、事業者が自律的に管理する必要があります。
本記事では厚生労働省が発行する『化学物質管理者講習テキスト』の第3章をかみ砕いてわかりやすく解説しています。
記事を最後までお読みいただくと、労働災害を予防するポイントは「知る」ことであるとおわかりいただけるはずです。
目次
労災の8割は特別則の規制対象外物質で起こっている
画像引用:厚生労働省『化学物質管理者講習テキスト』図2.2より
労働安全衛生法では化学物質での健康被害を防ぐために、有機則と特化則の特別則で規制対象物質を定めています。
- 有機則:キシレンやトルエンなど54種類
- 特化則:エチルベンゼンやジクロロメタンなど75種類
特別則で規制されている物質は2024年12月現在で129種類ですが、※GHS分類で危険性・有害性があるとされている物質は、なんと数万種類もあります。
日本における化学物質による労働災害(労災)のうち、特別則で規制されている物質以外が原因のものは約8割です。
つまり、特別則で規制されている物質のみ予防策を講じても、化学物質による労災は防ぎきれないといえます。
※GHS:化学品の分類および表示に関する世界調和システムのことで、化学物質の危険有害性を世界的に統一された基準に従って分類すること。
中小企業では化学物質を「知る」ことが大切
画像引用:厚生労働省『化学物質管理者講習テキスト』表3.1より
上記の表は化学物質を取り扱う事業所の従業員と労災の発生状況を示したものです。
一部例外はありますが、従業員数が少ない中小企業ほど発生の割合が多いことがわかります。
大企業ほど「安全」に関する意識が高く、専門部署もあるため、教育や対策が講じやすいためと推測可能です。
中小企業では、取り扱う化学物質の危険性を従業員が「知らなかった」ために起こった労災が数多くあります。
特別則で規制されている物質以外でも危険性が高いということを、正しく「知る」ことで労災の発生を予防することが可能です。
労災の事例と予防するポイント
ここからは以下2つの事例を確認して、労災が起こった原因と予防するポイントについて触れていきます。
- エタノールによる部品洗浄中に起こった火災事故
- ラッカー塗装による有機溶剤中毒
先ほども解説したとおり、労災を予防するポイントは「知る」ことです。
化学物質の危険性は『GHSラベル』を見れば、おおよその見当がつきます。
エタノールによる部品洗浄中に起こった火災事故
画像引用:厚生労働省『化学物質管理者講習テキスト』図3.5より
上の画像は洗浄作業に使用されるエタノールのGHSラベルの例です。
このラベルを見ると、引火性の高い液体及び蒸気であることがわかります。
金属加工の工場で部品に付着したエタノールをエアースプレーで吹き飛ばす作業をしていた外国人労働者が、火災事故で命を落とすという労災が発生しました。
この外国人労働者はストーブの近くで作業しており、エアースプレーで吹き飛ばしたエタノールの蒸気が出火の原因だったと推測されます。
引火性の高いエタノールを使用していることを外国人労働者に知らしめて、正しい教育ができていれば予防できた労災だといえるでしょう。
ラッカー塗料による有機溶剤中毒
画像引用:厚生労働省『化学物質管理者講習テキスト』図3.12より
上の画像はラッカー塗料のGHSラベルの一例です。
トルエン、キシレン、エチルベンゼンという有機則と特化則で規制されている化学物質が使用されていることがわかります。
ラッカー塗料を屋内で使用する際は、保護具を正しく着用して、局所排気装置などで換気することが必須です。
もし防毒マスクなどの保護具を付けていない場合、有害物質を吸入してしまい、頭痛や嘔吐などの中毒症状が起きる可能性があります。
労災を発生させないためにもGHSラベルを周知して、正しい方法で作業することが大切です。
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GHS分類で有害と判定されている化学物質には、製造者にGHSラベルの表示とSDSの交付が義務付けられています。
GHSラベルとSDSから化学物質のリスクアセスメントを行うことは、事業者の義務です。
労災を予防するためには、化学物質のリスクを現場に正しく落とし込む必要があります。
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