建築塗装での溶剤系塗料から水性塗料への切り替えについて
建築塗装の現場では、環境配慮や作業環境改善の観点から、水性塗料への切り替えが少しずつ進んでいます。
この動きは工業塗装より顕著です。
しかし、実際の塗装現場では「色々な不安があり、溶剤系塗料から水性塗料に全ては切り替えられない」という声が依然として残っています。
今回は建築塗装を中心に現場で施工を行う塗装業者である株式会社HookPekの福田社長に、溶剤系塗料と水性塗料の実情、そして塗装職人が感じている健康リスクについてお話を伺いました。
水性塗料の「イメージ」が切り替えの障壁
建築塗装の世界では、溶剤系塗料から水性塗料への切り替えが進んでいる一方で、切り替えに対してまだ慎重な見方が多くあります。
水性塗料に対して現場の職人が抱いているイメージは以下のとおりです。
- 剥がれやすいのではないか
- 塗膜の密着が悪いのではないか
- 長期耐久性に不安があるのではないか
建築塗装では、一度塗装すると10年近く塗り替えないケースも多くあります。
そのため「もし不具合が出たらどうするのか」という責任を考えると、新しい塗料への切り替えには慎重にならざるを得ません。
メーカーの仕様書を見ると問題が無くても、施工経験が少ない塗料については「本当に大丈夫」と言い切れないというのが職人の本音のようです。
また、建築塗装では屋根、雨樋、金属部材など素材が多種多様であり、現場ごとに条件が異なります。
こうした状況も、水性塗料への完全な切り替えを難しくしている要因の一つです。
自分の健康面はもちろん気になるが…。
塗装職人にとって、有機溶剤の人体への影響は身近な問題です。
吹付塗装を行う現場では、塗料が体に付着することもあり、皮膚からの吸収も気になると福田社長は話します。
溶剤系塗料を使用した作業の後は、疲れを感じやすいようです。
「塗料のニオイがきついと感じた日は、明らかに疲れますね。早く寝ないと回復しないこともあります。」
こうした体感的な負担は、多くの塗装職人が感じているものです。
福田社長の父親も過去に同じ塗装の仕事に携わっており、体調を崩されたことがありました。
直接的な原因が有機溶剤だったかどうかは分かりませんが、塗装の仕事を長年続けていると健康リスクを意識する場面が多くなります。
そのため、「健康面を考えると、できるだけ水性塗料を増やしていきたい。」というのが福田社長の本音です。
健康面の対策と現実
有機溶剤のリスクに対して、以下のようにしっかりとした安全対策を行っている企業もあります。
- 高性能な保護マスクの使用
- 保護服の着用
- 換気設備の導入
- 作業時間の管理
しかし、こうした対策にはコストがかかります。実際の現場では、そこまでの対策を十分に行なうことが難しいのが現実です。
「安全対策をしっかりやっている会社もありますが、弊社ではそこまでお金をかけられないというのが正直なところです。
結局、お客様がそのコストを負担してくれるわけではないので…。」と福田社長は語ります。
現場の職人だけで作業環境を変えるのは簡単ではありません。
ミドリ商会では「業界を変えるならピラミッドの上から変わる必要がある」と考えています。
一番の課題は「無知」であること
福田社長が特に問題だと感じているのは、現場での有機溶剤の危険性に対する認識の低さです。
塗装業界では、危険な作業であることは理解されているものの、「昔からこういう仕事だから仕方ない」という感覚が残っています。
実際、塗装職人の間ではアスベストの危険性は広く知られていますが、有機溶剤についてはそこまで強く意識されていないことが多いようです。
アスベストと同じく、有機溶剤も長期的に人体へ影響を与える可能性がある物質です。
換気が不十分な空間での作業では中毒事故が起きることもあり、実際に死亡事故が発生した事例もあります。
有機溶剤に関する正しい知識を身に付けることが大切
塗装の仕事は、社会にとって欠かせない大切な仕事です。しかし、その一方で作業環境にはさまざまなリスクが伴います。
だからこそ、重要なのは正しい知識を持つことではないでしょうか。
有機溶剤の危険性を理解し、適切な保護具を使用すること。
作業環境をできる限り安全にすること。
そして、水性塗料などの選択肢も検討しながら、健康リスクを減らしていくこと。
こうした取り組みを少しずつ積み重ねていくことが、塗装業界の安全な未来につながります。
ミドリ商会では、今後も有機溶剤の有害性や危険性などの情報を正しく発信し、塗装業界の意識が全体的に変わるように啓蒙活動を続けていく所存です。
福田社長、貴重なお話をありがとうございました。