リスクアセスメントの進め方がわからない人向け|5ステップで解説
「リスクアセスメントの進め方がわからない…。」とお困りではありませんか?
リスクアセスメントについて、具体的に何をどこまで行えばよいのかわからず、手が止まってしまうケースは少なくありません。
そこで本記事では、化学物質のリスクアセスメントについて、概要や必要な理由を整理した後に、具体的な進め方を5つのステップで解説しました。
リスクアセスメントの進め方を知りたい方は必見です。
目次
リスクアセスメントって何?
種類 | 評価の起点 | 主な対象リスク | 主なリスク |
化学物質 | SDS | 塗料、溶剤、洗浄剤 | 急性中毒、慢性的な健康障害 |
機械 | 危険源 | プレス機、コンベア | 挟まれ、巻き込まれ |
作業 | 行動・手順 | 手作業、段取り替え | 転倒、落下、無理な姿勢 |
電気・エネルギー | エネルギー | 制御盤、メンテナンス | 感電、火災 |
環境・外部環境 | 影響範囲 | 排水、排ガス、騒音 | 法令違反、環境事故 |
リスクアセスメントとは、職場で発生する可能性がある危険性や有害性を特定して、それが原因で起こる労働災害の可能性と程度を見積りするための手法です。
本記事では「化学物質」のリスクアセスメントに焦点を当てて解説しますが、その他にも上の表に記した種類があります。
リスクアセスメントの目的は、事故や健康障害を未然に防ぐことであり、単なる書類作成ではありません。
化学物質のリスクアセスメントでは、SDSに記載された情報を起点に、実際の作業条件や使用量、作業時間などを考慮してリスクを見積もります。
「危険な物質かどうか」ではなく、「どのような使い方をすると、どの程度のリスクがあるのか」を把握することが大切です。
化学物質のリスクアセスメントが必要な理由
化学物質のリスクアセスメントが必要な理由は、主に以下の3点です。
- 事業者の「自律的管理」に時代が変化しているため
- 「使い慣れている=安全」ではないため
- 事業者の義務に違反する可能性があるため
それぞれを深掘りして確認していきましょう。
事業者の「自律的管理」に時代が変化しているため
近年の化学物質管理は、国が個別の物質ごとに細かく規制する「一律規制型」から、事業者が自らがリスクを把握し管理する「自律的管理」へと大きく転換しています。
化学物質の種類や使用形態が多様化し、国の規制だけでは実態に即した安全確保が難しくなってきたことが転換の背景です。
国が示すのは最低限の枠組みや考え方にとどまり、実際に「どの化学物質を、どの作業で、どのように使うのか」を一番理解している事業者自身が、危険性や有害性を評価し、適切な対策を講じることが求められています。
その中心的な手法が、化学物質のリスクアセスメントです。
現場の実態に即した判断と改善を継続する姿勢が、今まで以上に重要になっています。
「使い慣れている=安全」ではないため
長年使用している化学物質であっても、「使い慣れている=安全」とは限りません。
化学物質による健康障害の多くは、急性事故ではなく、異常に気づいた時にはすでに影響が進行していることもあります。
化学物質の使用方法や使用量の変化、設備の老朽化、換気性能の低下によって、当初想定していなかった化学物質のばく露が発生していることもあるでしょう。
法令改正や知見の蓄積により、化学物質の有害性評価そのものが更新されることも珍しくありません。
過去に問題がなかった物質でも、最新のSDSでは分類や注意喚起が強化されているケースがあります。
こうした変化を見逃さず、定期的にリスクアセスメントを実施することが、作業者の健康と安全を守るうえで不可欠です。
事業者の義務に違反する可能性があるため
労働安全衛生法では、化学物質を取り扱う事業者に対して以下の義務が課されています。
- SDSを入手して、従業員に周知する
- 化学物質の危険性や有害性を把握する
- 作業実態に応じたばく露防止措置を講じる
前述のとおり、近年の法改正により、特定の物質だけを対象とする管理から、幅広い化学物質を対象にリスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて対策を講じることが強く求められるようになりました。
リスクアセスメントを実施していない、あるいは形式的に行っているだけの場合、労働基準監督署の立入調査で、適切な安全配慮義務を果たしていないと判断される可能性があります。
万が一、化学物質による健康障害や労働災害が発生した場合には、事前のリスク評価や対策の有無が問われ、是正指導や行政処分につながることもあります。
法令を守るという観点からも、実態に即したリスクアセスメントの実施が大切です。
化学物質に関するリスクアセスメントの進め方5ステップ
化学物質に関するリスクアセスメントを具体的に進めるためには、以下5つのステップを踏むことが大切です。
- SDSからGHS分類と危険性や有害性を特定する
- 作業環境下でのばく露濃度を推定する
- ツールを使ったリスクを積算する
- リスクの低減措置を検討して実行する
- リスクアセスメントの結果を従業員に周知する
それぞれを確認していきましょう。
1.SDSからGHS分類と危険性や有害性を特定する
最初のステップは、対象となる化学物質のSDSを確認し、GHS分類や危険性や有害性情報の把握です。
GHS分類とは、化学物質が持つ危険性や有害性を国際的に統一した基準で分類・表示する仕組みのことで、SDSやラベルに記載されています。
SDSを見る際は、健康有害性、物理化学的危険性、環境有害性のうち、作業者に影響する項目を中心に確認します。
化学物質に「どのような危険があるか」を整理する段階です。
2.作業環境下でのばく露濃度を推定する
次に、実際の作業環境において、作業者がどの程度化学物質にばく露する可能性があるかを推定します。
化学物質の使用量、作業時間、換気状況、作業姿勢などを考慮し、測定値がない場合は簡易的に測定を行う場合もあります。
SDSの情報と現場条件を結び付ける重要な工程です。
3.ツールを使ってリスクを積算する
SDSから把握した有害性情報と、作業環境下で推定したばく露の程度をベースに、評価ツールを使ってリスクを積算します。
代表的なツールが、厚生労働省が公開している CREATE-SIMPLEです。
CREATE-SIMPLEでは、化学物質のGHS分類、使用量、作業時間、換気状況などを入力することで、専門的な測定を行わなくても、リスクレベルを算出できます。
このようなツールを活用することで、担当者の経験や感覚に依存せず、客観性のある評価が可能です。
ただし、算出された数値や区分は、あくまで対策の優先順位を判断するための指標です。
リスクが高いと判定された場合には、作業環境測定の実施や、より詳細な評価手法への切り替えを検討するなど、次の対応につなげる必要があります。
4.リスクの低減措置を検討して実行する
リスク評価の結果が出たら、リスク低減措置の検討と実行を行いましょう。
最初に考えるべきなのが、危険源そのものへの対策を優先することです。
具体的には、より危険性の低い物質への代替、密閉化や自動化による作業者のばく露機会の削減、局所排気装置の設置や改善といった設備的対策を最優先で検討します。
それでもリスクが残る場合には、作業手順の見直しや作業時間の短縮、教育の実施といった管理的対策を組み合わせることが大切です。
保護具の着用は重要ですが、最後の手段として位置付けましょう。
対策は計画するだけでなく、実際に現場で守られているか、効果が出ているかを確認し、必要に応じて見直すことが大切です。
5.リスクアセスメントの結果を従業員に周知する
リスクアセスメントは、評価や対策を実施しただけでは完結しません。
結果を従業員に正しく伝え、理解してもらうことで初めて効果を発揮します。
どの化学物質にどのような危険性があり、どの点に注意すべきか、なぜその対策が必要なのかを、専門用語を避けて分かりやすく説明することが大切です。
具体的には、作業手順書への反映、掲示物の作成、定期的な教育の実施などを通じて周知を行います。
周知した後も現場で対策が守られているか、理解不足が起きていないかを確認し、必要に応じて内容を見直しましょう。
リスクアセスメントの結果を共有し続ける仕組みを作ることが、化学物質による労働災害防止につながります。
忙しい事業者の味方『リスクアセスメント代行パッケージ』
リスクアセスメントの進め方に関する手順を5つのステップで確認してきましたが、実際には本業を行いながら対応する工数がない事業者も多いでしょう。
化学物質の「自律的管理」が必須になっている今日ですが、リスクアセスメントは必ず自社で実施しないといけないわけではありません。
工数が取れない事業者では、「リスクアセスメントを外部業者に代行依頼する」という方法があります。
ミドリ商会では『リスクアセスメント代行パッケージ』のサービスを提供中です。
使用している化学物質のSDSさえご準備いただければ、後は忙しい事業者に代わってリスクアセスメントを行います。
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化学物質のリスクアセスメントならミドリ商会にお任せください
化学物質のリスクアセスメントは、事業者の義務です。
従業員が安心して働ける環境を作るためにも、本記事で解説した5つのステップに沿って、間違いなく実施していきましょう。
ミドリ商会では『リスクアセスメント代行パッケージ』の他にも、作業環境測定や局所排気装置の年次点検など、職場の安全を守るためのサービスを多数展開しています。
化学物質を取り扱う事業者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。