有機則と特化則の違いをわかりやすく解説!定められた義務を確認
「労基が来て塗装現場について是正勧告を受けた…。」という話を聞いたことはありませんか?
塗装作業を行う事業所では、労働者の健康を守るために、有機則や特化則で義務が課せられており、違反している場合には労基から指摘されるケースがあります。
塗装作業を行う事業所では、有機則と特化則の違いを理解して、適切に対応することが大切です。
対策ができていれば、急に労基の立ち入り検査があっても慌てなくて済むでしょう。
本記事では有機則と特化則の違いや、それぞれで課されている義務についてわかりやすく解説します。
労働者が安心して働く環境を整えたいと考えている方は必見です。
目次
有機則と特化則の違い
有機則と特化則の正式名称は、それぞれ以下の通りです。
- 有機則:有機溶剤中毒予防規則
- 特化則:特定化学物質障害予防規則
どちらも労働安全衛生法に基づく規則ですが、それぞれで指定している化学物質が違うと覚えておきましょう。
有機則と特化則の違いを簡単に確認していきます。
どちらも労働安全衛生法に基づく規則
有機則と特化則はどちらも労働安全衛生法に基づく規則です。
労働安全衛生法は職場における労働者の安全と健康を確保して、安全な職場環境を作るために定められています。
労働安全衛生法では、健康被害が出る可能性が高い物質を取り扱う事業者に対して、講ずべき措置を規則化しており、有機則と特化則はその代表例です。
他には鉛中毒予防規則や石綿(アスベスト)障害予防規則などがあります。
有機則と特化則はどちらも労働者の安全と健康を守るために、事業者が講じる措置を義務付けた規則だと覚えておきましょう。
それぞれ指定している化学物質が違う
有機則と特化則では、それぞれで指定している化学物質が違います。
有機則の対象は、第1種有機溶剤・第2種有機溶剤・第3種有機溶剤の3つに分けられており、全部で54種類です。
ジクロルエチレン、アセトン、キシレンなどがあります。具体的な対象物質に関しては以下の記事をご確認ください。
■参考記事:有機則とは?対象となる事業者や有機溶剤取扱い時の義務について解説
特化則の対象は、第一類物質・第二類物質・第三類物質の3つに分けられており、規制対象物質が随時追加されています。
平成25年1月には塗料でよく使用されるエチルベンゼンが対象物質に追加されました。特化則の対象物質については、以下記事の表をご確認ください。
■参考記事:最近よく聞く『特化則』って何??何のための規則なのか解説致します!
有機則と特化則で義務付けられていること
規制対象となる物質は違いますが、有機則と特化則で定められている事業者が講じるべき義務はほぼ同様です。
義務付けられていること | 有機則 | 特化則 |
作業主任者の選任 | 必要 | 必要 |
危険性の掲示 | 必要 | 必要 |
蒸気の発散源対策 | 必要 | 必要 |
特殊健康診断の実施 | ・6ヶ月毎に1回 ・5年間記録保存 | ・6ヶ月毎に1回 ・30年間記録保存 |
作業環境測定 | ・6ヶ月毎に1回 ・5年間記録保存 | ・6ヶ月毎に1回 ・30年間記録保存 |
有機則と特化則で義務付けられていることに大差はありませんが、特殊健康診断と作業環境測定の記録保存機関が大きく違うことがわかります。
特化則で定められている物質は、がんなどの慢性・遅発性障害を引き起こすリスクが高く、記録の保存が長期間なのが特徴です。
有機則と特化則どちらも、上記義務に違反した場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
作業主任者の選任
有機則と特化則の対象物質を扱う現場では、危険性や有毒性についての知識と経験を持つ管理者=作業主任者を選任する必要があります。
誰でもなれるわけではなく、技能講習を受講して試験に合格した人の選任が必要です。
危険性の掲示
有機則と特化則の対象物質を扱う現場では、危険性を表す以下の掲示物を置く必要があります。
- 作業主任者の職務を記載したもの
- 有機溶剤の区分を表したもの(色別に表示)
- 有機溶剤等使用の注意事項を記載したもの
- 特定化学物質に関する注意事項を表したもの
作業者の安全確保のためにも確実に掲示しましょう。
蒸気の発散源対策
有機則と特化則の対象物質は、蒸気もしくは粉じんを人が吸引すると健康被害のリスクが著しく高まるため、塗装ブースなど局所排気装置の設置が義務付けられています。
設置する局所排気装置は1年以内に1回の定期自主検査が必要です。
局所排気装置の機能が低下している場合、作業者の吸引リスクが高まるので、確実に実施しましょう。
特殊健康診断の実施
有機則と特化則の対象物質は、作業者の体内に取り込まれやすく健康被害を引き起こしやすいため、リスク管理のために特殊健康診断の実施が義務付けられています。
使用している有機溶剤の調査を行った上で、尿や血液検査、眼底写真の撮影などを行い、作業者の健康状態をチェックします。
作業者には6ヶ月に1回必ず受診してもらわないといけないので、「忘れていた!」ということがないようにしましょう。
作業環境測定
作業者の安全と健康を守るために、有機則と特化則の対象物質を扱う事業所では、6ヶ月毎に1回の作業環境測定が義務付けられています。
作業環境測定は、作業現場の実態を把握するサンプリングと分析のことです。
作業環境測定は有資格者である「作業環境測定士」による現場サンプリングが必須となります。
作業環境測定について詳しく知りたい方は、以下の商品ページをご参照ください。
有機則と特化則の対象物質による災害発生事例
有機則と特化則の対象物質は、人体に影響を及ぼす可能性が非常に高いため、事業者に対策が義務付けられています。
ここからは有機溶剤と特定化学物質による中毒の事例を紹介しますので、自社で発生させないための参考にしてください。
有機溶剤による中毒の事例
第2種有機溶剤であるメチルエチルケトンが含まれたインクを取り扱う事業所で、同じ部屋で10数m離れた場所にいた作業者が頭痛を訴えた事例があります。
この作業者が病院で診察を受けたところ、有機溶剤中毒と診断されました。
作業場の換気設備は稼働していましたが、能力が不十分だったことと、作業主任者が選定されていなかったことが原因で、災害になってしまった事例です。
特定化学物質による中毒の事例
第二類物質の特定化学物質トリクロロエチレンを含んだ薬品をスプレーガンで噴射して洗浄する作業を行っていた人が中毒になった事例があります。
この事例は数年間同じ作業をしていたために中毒になってしまった事例です。
局所排気装置や保護具が適切に使用されていれば、防げた事例だといえるでしょう。
作業者の安全と健康を守ることが一番
有機則と特化則はどちらも労働安全衛生法によって定められた規則であり、作業者の安全と健康を守るためのものです。
作業環境測定の実施や局所排気装置の設置は、事業者にとっては負担かもしれませんが、作業者の健康被害が起きてからでは取り返しのつかないことになります。
ミドリ商会は有機則や特化則に対応する塗料や保護具、設備など幅広い提案が可能です。
作業環境測定の実施も請け負っていますので、お困りの方はぜひ一度お問い合わせください。