1. HOME
  2. 健康塗料は本当に良いもの?リスク…

塗料ブログ

2026.02.24

健康塗料は本当に良いもの?リスク・経営・生産性から考える本質について

「健康塗料は本当に良いものなのか?」

近年、水性塗料や特化則非該当の塗料を中心に「健康面」を打ち出した塗料が増えています。

一方で、現場からは「生産性は落ちないのか」「コストはどうなるのか」といった現実的な声も上がっているのも事実です。

本記事では、健康塗料を単なるイメージや印象で語るのではなく、リスク・経営・生産性という複数の視点から、本質を整理して解説します。

 

健康塗料について改めて考える理由について

現在の日本では、労働人口が減少しており、各企業が人的資本経営に舵を切っています。

従業員の健康への配慮は単なる福利厚生ではなく、企業価値や持続可能性と直結するテーマです。

SDSには発がん性区分が明示され、多くの塗料に含まれる有機溶剤であるトルエン、エチルベンゼン、キシレン、ホルムアルデヒドなどに対する社会的関心も高まっています。

ちなみにホルムアルデヒドはアスベストと同じ発がん性ランクに位置付けられる有機溶剤です。

しかし、有機溶剤の危険性や有害性を具体的に説明することは簡単ではありません。

直ちに重大な健康被害が出るわけではなく、影響は長期的に現れる可能性があるため、そのリスクの大きさを実感しにくいからです。

こうしたわかりにくさがあるために、「なんとなく怖い」「昔から使っているから問題ない」といった両極端な意見が生まれやすくなります。

本来必要なのは、不安をあおることでも、過小評価することでもありません。

作業環境測定の結果や許容濃度との比較、使用量やばく露時間といった具体的なデータをもとに、リスクの大きさを冷静に見極める姿勢が大切です。

漠然とした印象を、定量的な判断へと置き換えていくことが、健康塗料を語る出発点になります。

 

そもそも健康塗料とは?

健康塗料とは、ミドリ商会が考えた造語であり、「第1種有機溶剤および第2種有機溶剤を含む従来の塗料以外のもの」と定義しています。

つまり有機則や特化則に該当しない塗料のことです。水性塗料やエチルベンゼンフリーの塗料が代表的です。

SDSで発がん性区分が明示される時代において、特化則非該当であることは健康塗料の導入時に重要な判断材料になります。

特化則に該当する塗料では、特殊健康診断の実施、作業主任者の選任、作業環境測定、記録保存などの対応が義務付けられますが、非該当であればこれらの法的義務が発生しません。

これらは継続的な管理コストや人的リソースの負担に直結します。法令対応の負荷が軽減されることは、経営面における大きなメリットです。

ただし強調すべきなのは、健康塗料は「健康リスクがゼロ」になるものではないという点です。

あくまでリスクが下がる可能性がある、という位置付けとなります。

リスクが0か100かという両極端で考えるのではなく、リスク低減の度合いで考えることが大切です。

 

健康塗料は本当に良いものか?リスクの評価方法 

健康塗料の良し悪しを判断する際、塗料単体での比較は適切とは言えません。

作業内容、局所排気装置の有無、使用量、乾燥条件など、現場の条件によってばく露リスクが大きく変わるためです。

したがって、条件を揃えたリスクアセスメントが不可欠です

作業環境中の濃度測定や※許容濃度との比較、使用量やばく露時間の算出などを通じて、どの程度のリスクがあるのかを数値で把握する必要があります。

そのうえで、有機溶剤量の違いや、特化則該当か非該当かといった制度上の区分を確認することで、企業として求められる管理水準が見えてきます。

「なんとなく良い」ではなく、「どれだけリスクが下がるのか」を数値で確認することは非常に重要です。

※許容濃度:日本産業衛生学会が定める労働者が 1日8時間・週40時間程度、長期間ばく露しても健康への悪影響がほとんど生じないと考えられる濃度の基準値のこと

 

健康塗料と経営の現実問題について 

健康塗料の中でも、水性塗料は環境と労働者の健康面で優位性があるとされます。

しかし設備投資が必要になるケースや、乾燥条件に制約がある場合も多く、工業塗装業界では普及率は高くありません。

現場では出荷納期、台数、1時間サイクルといった生産性が最優先事項です。

溶剤系塗料は揮発速度をコントロールでき、季節の影響も受けにくいという強みがあります。

一方で、水性塗料も進化しており、5分指触乾燥の製品も登場し、フタル酸塗料の代替用途では乾燥差が縮小傾向です。

「水性=遅い」というイメージは過去のものになりつつあります。

価格面では、水性塗料は高価なケースがほとんどですが、法令対応コストや特殊健康診断費用まで含めて比較すべきです。

数値化しやすいコストは議論しやすい一方で、健康リスクという見えにくいコストは後回しになりがちです。

この見えにくい部分にこそ、経営者視点での判断が求められます。

 

健康塗料が良いものかどうかは「目的」次第

最終的に問うべきは、「何を優先するのか」という企業の目的です。

「従業員の健康を最優先にするのか。生産性を最優先にするのか。あるいは両立の方法を探るのか。」

塗料の本質は、フタル酸かアクリルかという成分の違いではありません。企業の課題をどう解決するかという視点にあります。

健康塗料は万能ではありませんが、リスクを数値で捉え、経営と生産性のバランスを取りながら選択するのであれば、有力な選択肢の1つです。

「良いか悪いか」ではなく「何のために選ぶのか」 その問いに向き合うことこそが、本質的な議論の出発点ではないでしょうか。

おすすめ記事

2019.02.04
コンクリート表面含侵材
2020.11.07
黄色の塗料は透けやすい?下塗りをしてキレ…
2021.03.05
塗膜の評価の仕方・方法が分からない!とい…
2019.07.09
カラーマンホール用の着色剤について(塗装…
2024.06.21
メチルイソブチルケトンの発がん性は?人体…
2025.02.25
リスクアセスメント後のリスク低減対策の優…





TEL CONTACT
PAGE TOP