ジクロロメタンの特徴と人体への影響|代替の洗浄剤への変更事例も紹介
金属加工後の洗浄剤としてジクロロメタンを使用している事業所は多くあります。
ジクロロメタンは溶解力・脱脂力が高く、とても優秀な洗浄剤ですが、環境や人体にも大きな負担がかかるのが難点です。
本記事ではジクロロメタンの特徴や人体への影響についてわかりやすく解説しています。
ジクロロメタンから違う洗浄剤に切り替えた事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ジクロロメタンとは?
ジクロロメタン(塩化メチレン)は比較的安価で使い勝手の良い塩素系溶剤として有名であり、主な特徴は以下のとおりです。
- 主に洗浄剤として使用される
- 不燃性を持ち大量に保管可能
- 特化則の対象
ジクロロメタンの特徴を掘り下げて確認していきましょう。
主に洗浄剤として使用される
ジクロロメタンは溶解力や脱脂力が強くて速乾性があるため、各種部品の洗浄剤として使用されることが多い薬品です。
金属加工を行う事業所では、加工時に切削油を使用することがほとんどであり、出荷前に必ず洗浄の工程が入ります。
溶解力・脱脂力が高いジクロロメタンは洗浄剤として非常に優秀であり、多くの事業所で使用されているのも頷けます。
不燃性を持ち大量に保管可能
溶剤の多くが消防法で危険物と定められていますが、ジクロロメタンは不燃性のため、消防法に該当しません。
消防法に非該当である最大のメリットは保管量に制限がないということです。
他の溶剤系洗浄剤の多くは危険物なので、保管量に限りがある上に、必要に応じて自治体への届出が必要となります。
届出不要で大量に保管できるジクロロメタンは、事業者にとって使い勝手が良い洗浄剤だといえるでしょう。
特化則の対象
洗浄剤として優秀であり、速乾性にも優れているジクロロメタンですが、強い臭気があり、人体や環境には良くないのが難点です。
ジクロロメタンは2014年からは特化則の対象物質に指定されています。
特化則は労働者の健康を守るために定められており、ジクロロメタンは人体への影響が大きいと言わざるを得ないでしょう。
またジクロロメタンはPRTR法(化管法)の規制物質でもあります。
使用する事業所ではジクロロメタンを1年間でどれだけ排出したか、国への報告が必要です。
ジクロロメタンの人体への影響
ジクロロメタンは特化則の対象物質であり、人体への影響が大きい溶剤です。
- 吸入すると一酸化炭素中毒になる
- 発がん性の恐れがある
ジクロロメタンが人体に与える影響について確認していきましょう。
吸入すると一酸化炭素中毒になる
ジクロロメタンを吸入すると、体内で一酸化炭素に変換されて一酸化炭素中毒になる恐れがあります。
初期症状では頭痛やめまい・吐き気などが起こり、場合によっては意識を消失することもあるでしょう。
実際に洗浄液としてジクロロメタンを使用している事業所で、吸入によって意識を失う労災も発生しています。
幸いなことに命に別条はありませんでしたが、15日間も休業することになった事例です。
ジクロロメタンの人体への影響を知っておけば、防げた可能性は大いにあります。
参考:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「金属製品の洗浄装置における、非定常作業中の有機溶剤中毒」
発がん性の恐れがある
ジクロロメタンは特化則に該当しており、発がん性の恐れがある溶剤として有名です。
大阪にある印刷工場で働いていた労働者の多くが胆管がんを発症したことにより、ジクロロメタンの発がん性が注目されるようになりました。
この印刷会社では印刷機のインクを拭き取る洗浄剤としてジクロロメタンやジクロロプロパンが使用されていたことがわかっています。
ジクロロメタンやジクロロプロパンが胆管がんの原因となったかどうかは断定できないものの、強い疑いがあるとされた事例です。
ジクロロメタンに代わる洗浄剤に切り替えた事例
ジクロロメタンは洗浄剤として多くの企業が採用していますが、解説してきたとおり人体への影響も大きく、最近では違う洗浄剤に切り替える企業も増えています。
金属の精密加工を行っているお客様で、ジクロロメタンから水溶性第3石油類洗浄剤に切り替えていただいた事例があります。
ジクロロメタンと比較して作業性・乾燥性が悪く、価格も高価であり、保管量にも制限があるなど、一見デメリットばかりですが、この洗浄剤は特化則の非該当品です。
作業を工夫すれば現状の生産量を確保できるということで、労働者の健康も考えて切り替えていただきました。
ジクロロメタンは産業廃棄物処理費用が高騰している
ジクロロメタンは人体や環境への影響が大きく、不要となった場合も簡単に廃棄することができません。
当然ながら産業廃棄物として処理する必要がありますが、この産業廃棄物費用が高騰しています。
最終処分場が少なく、中には処分を拒否されるケースも増えてきているようです。
処分費用が高騰していることから、ジクロロメタンを他の洗浄剤に切り替えようとする動きも加速しています。
今後は環境や労働者に配慮することが大切
ジクロロメタンは溶解力・脱脂力に優れた洗浄剤です。
モノづくりに欠かせない洗浄工程を支えてくれましたが、同時に環境や労働者に大きな負担をかけていたともいえるでしょう。
SDGsが注目される現在では、作業性や利益だけではなく、環境や労働者に配慮することが大切です。
ミドリ商会ではSDGsの観点から、環境や労働者に配慮した商品をご提案しております。
ジクロロメタンに変わる洗浄剤も提案できますので、お気軽にお問い合わせください。