エチルベンゼンに発がん性はある?起こりうる症状や対処法を解説
「塗料に入っているエチルベンゼンに発がん性があるって聞いたけれど、使ってて大丈夫?」と不安に思う人もいるでしょう。
エチルベンゼンは発がん性の疑いがある化学物質として有名であり、できれば使いたくないと考える人も多いかもしれません。
本記事では、エチルベンゼンが原因で起こりうる中毒症状や対処法について、わかりやすく解説しています。
目次
エチルベンゼンとは?
エチルベンゼンとは、別名エチルベンゾールとも呼ばれる有機溶剤で、キシレンが含まれている塗料やシンナーに含まれています
エチルベンゼンは発がん性が指摘されている物質であり、特化則の対象物質です。
エチルベンゼンの含有量が1%を超える塗料やシンナーを取り扱う事業所では、6ヶ月以内ごとに1回の作業環境測定が義務付けられており、測定結果を30年間保存する必要があります。
エチルベンゼンの成分
エチルベンゼンは、エチレンとベンゼンを混合して触媒によって処理することで生産される物質です。
化学式はC₈H₁₀となり、炭化水素であることがわかります。
エチルベンゼンに限らず、炭化水素は高濃度になると人体に有害であり、息詰まりや息切れ、神経異常などの中毒症状が表れる場合があるので、取り扱い時は注意が必要です。
エチルベンゼンによって起こりうる中毒症状
エチルベンゼンは皮膚についたり、吸い込んだりすることで以下のような中毒症状が起こる可能性があります。
- 気道や目の炎症
- めまいや頭痛
- がん
それぞれの症状について詳細を確認していきましょう。
気道や目の炎症
エチルベンゼンは目や鼻の粘膜、呼吸器に強い刺激性があり、飲み込んだり、吸い込んだりすることで気道が刺激され、喉が痛くなる・咳が出るなどの中毒症状が出る可能性があります。
もしエチルベンゼンが目に入ったら炎症が起こり、視覚障害が起こる可能性もあるので注意が必要です。
ウサギに対して行なった試験によると、角膜には障害が出なかったとの報告がある一方で、わずかな不可逆性障害(組織が壊れて回復しない状態)を引き起こすという報告もあります。
めまいや頭痛
エチルベンゼンは神経系への有害性もあり、高濃度であれば短時間のばく露でもめまいや頭痛が起こる可能性があります。
100ppmを超えるエチルベンゼンをばく露すると、倦怠感や眠気、頭痛などの神経中毒症状が現れるとの報告もあり、高濃度になればなるほど危険性が増すといえるでしょう。
がん
エチルベンゼンは、※発がん性「区分2」に該当する化学物質です。
ラットによる2年間のばく露試験では、がんの発生頻度が増加しており、発がん性の疑いがある物質として指定されています。
※発がん性区分2:人に対する発がん性が疑われる物質で、動物試験では発がん作用があるが、断定的な評価を下すには至っていないもの。
エチルベンゼンから身を守る対処法
中毒症状を引き起こす可能性があるエチルベンゼンから身を守るためには、以下を徹底することが大切です。
- 適切な保護具を使う
- 確実に排気する
- 応急処置を頭に入れておく
それぞれを掘り下げて確認していきましょう。
適切な保護具を使う
エチルベンゼンから身を守るためには、まず物理的に体に触れない、取り込まないようにすることが大切です。
- 呼吸器を守る→マスク
- 直接触れない→防護服、保護手袋
- 目を守る→ゴーグル
上記のように、適切な保護具をつけて作業することを心がけましょう。
確実に排気する
塗装を屋内で行なうなど、エチルベンゼンをばく露する可能性が高い作業場では、確実に排気することが大切です。
特化則・有機則では塗装ブースなどの局所排気装置を設置することが定められており、定期的に自主検査を行なうことが義務付けられています。
応急処置を頭に入れておく
万が一、エチルベンゼンが体に付着したり、目に入ったりした場合は、適切な応急処置を施すことが大切です。
- 吸入した場合→新鮮な空気のある場所に移動し、呼吸しやすい姿勢で休憩する
- 皮膚についた場合→速やかに洗浄する
- 目に入った場合→水で数分間注意深く洗浄する
- 飲み込んだ場合→吐かさずに、口をすすぐ
いずれの場合も医師の診断を受けた方が良いですが、まずは慌てずに上記の応急処置を行ないましょう。
応急処置の方法は作業場の近くに掲示して、いつでも見られる状態にしておくことが大切です。
エチルベンゼンによる労働災害の事例
エチルベンゼンは取り扱いを一歩間違えると、死に至る可能性もある化学物質であり、労働災害も数多く発生しています。
船の機関室の下にあるタンク内で手直し塗装をしていた作業者が有機溶剤中毒で意識を失った事例では、休日に1人で作業していた際に意識不明となり、発見まで17時間もかかってしまいました。
命に別条はありませんでしたが、窮屈な姿勢で意識を長時間失っていたことから、右足を切断しなければならなくなった痛々しい事例です。
エチルベンゼンが含まれない環境配慮型塗料
エチルベンゼンは発がん性の疑いがあり、人体にも影響がある化学物質ですが、塗料の乾燥が速く、作業性が良いため、現在でも多くのユーザーが使用しています。
使い方を間違えなければ優良な化学物質だといえるでしょう。
ミドリ商会では、作業者の安全とSDGsの観点からエチルベンゼンを含まない環境配慮型塗料を取り扱っています。
特化則や有機則に該当しない塗料が多く、労働環境の改善だけでなく、規則への対応負荷の軽減にも役立つ製品です。
環境配慮型塗料についてご興味がある方は、ぜひ一度ミドリ商会までご相談ください。