【導入事例】タッチアップ塗料を害の少ない水溶性塗料に切り替え!
塗装工程に欠かせない塗料やシンナーには、人体や環境に影響の大きい有機溶剤が含まれているものが多くあります。
お客様の中には「なるべく人体や環境に配慮した塗料を選びたい」と考えている人も多いでしょう。
ミドリ商会では、水溶性塗料をはじめとする環境配慮型塗料を積極的に提案しています。
今回は製品のタッチアップ工程で、ラッカー塗料から水溶性塗料に切り替えていただいたA社の事例についてご紹介します。
目次
A社に水溶性塗料をご採用した経緯
A社には水溶性塗料『アルクアTU』をご採用いただきました。導入に至った理由は以下のとおりです。
- 作業環境測定で第3管理区分と判定された
- 作業場すべてに局所排気装置を入れるのが現実的ではなかった
- 数多くある色に対応できた
- 作業者の健康に配慮したかった
導入までの経緯を簡単に紹介します。
作業環境区分で第3管理区分と判定された
A社では溶剤系のラッカー塗料を使っており、作業環境測定の実施が必要でした。
作業環境測定とは有機溶剤を扱う作業現場の実態を把握するための調査と分析のことです。
この作業環境測定において、A社の作業場は第3管理区分になると判明しました。
第3管理区分になると、有機溶剤濃度を下げるために局所排気装置の導入などの対策を打つ必要があります。
早急な対策が必要とのことで、ミドリ商会にお声がけいただきました。
作業場すべてに局所排気装置を入れるのが現実的ではなかった
A社は本社工場を含めて塗装作業場が全国にありますが、本社工場以外の拠点は賃貸物件となります。
そのため、設置工事を伴う局所排気装置を導入するのは現実的ではありませんでした。
そこで塗装現場の環境改善の対策としてミドリ商会が提案したのが、水溶性塗料の導入です。
一般的な塗料は樹脂などを溶かす溶媒がトルエンやエチルベンゼンなどの有機溶剤が使用されていますが、水溶性塗料の溶媒は25%が水で残りの75%はアルコール系の溶剤で構成されています。
特化則や有機則に該当する有機溶剤を使用しないため、局所排気装置を設置しなくてもよいことがA社の状況にフィットしました。
数多くある色に対応できた
A社に水溶性塗料をご検討いただく際に懸念材料だったのが、22種類という豊富な色に対応できるかという点です。
使用量が多いシルバーなどのメタリック系の色は水溶性塗料だとうまく出せないことが多いですが、塗料メーカーにもサンプルを作ってもらい、試行錯誤して何とか納得のいく色味が出せるようになりました。
水溶性塗料は特化則や有機則に該当しない分、使用できる材料が限られています。
入手性が悪い材料もありましたが、約1年をかけて数多くある色に対応していきました。
作業者の健康に配慮したかった
A社の塗装作業場では、従来の塗料を大量に使用した場合に、気分が悪くなる作業者の方もいらっしゃったようです。
有機溶剤はすぐに健康被害にならなくても、リスクが蓄積していきます。
A社では人材が最も大切であり、作業者の健康に配慮したいと考えていらっしゃいました。
作業者の健康に配慮できるのも、水溶性塗料を導入いただいた理由の1つです。
水溶性塗料を導入するメリット
水溶性塗料をご採用いただいたことにより、A社には以下のメリットを感じていただいています。
- 作業者の健康被害を軽減できる
- 作業環境測定を実施しなくて済む
- 貯蔵量を増やせる
それぞれのメリットを掘り下げて説明していきます。
作業者の健康被害を軽減できる
有機溶剤を扱う仕事に長期間従事していると、がんや肺炎などの健康被害が起きる可能性が高まります。
A社に導入いただいた水溶性塗料には、有機則や特化則や有機則に該当する有機溶剤が含まれておりません。
実際に水溶性塗料をご使用いただいた作業者の方からは「気分が悪くなることがなくなった」というコメントもいただいております。
以前と比べて格段に体への負担が減り、安心していただいたようです。
作業環境測定を実施しなくて済む
水溶性塗料を検討するきっかけとなった作業環境測定についても、水溶性塗料に切り替えることで実施する必要がなくなりました。
作業環境測定が義務づけられているのは、あくまで室内で有機溶剤を取り扱う事業場です。
水溶性塗料にはアルコール系の溶剤は含まれておりますが、キシレンやトルエンなどの有機溶剤は含まれていません。
作業環境測定を行う場合、6ヶ月以内に1回の実施が必要であり、費用は少なくとも1拠点あたり年間で10万円ほど掛かります。
このコストを削減できるのは、大きなインパクトだったといえるでしょう。
貯蔵量を増やせる
塗料は消防法により貯蔵量が定められています。
A社が従来使われていたラッカー塗料は第1石油類で、ご採用いただいた水溶性塗料は第2石油類です。
それぞれの指定数量は以下のとおりとなっています。
- 第1石油類:200リットル
- 第2石油類:1,000リットル
ご覧のとおり、水溶性塗料に切り替えることで5倍もの量を保管できることがわかります。
塗料が必要なときに在庫切れとなるリスクが軽減され、精神的な負担が少なくなりました。
環境や健康のことも考えて社会から求められる会社に
A社にはこの度水溶性塗料をご採用いただきましたが、実際の運用に至るまではいくつかのハードルがありました。
従来の溶剤系塗料と比較して、環境や人体には良いですが、コストが高額になり、乾燥性が悪くなるというデメリットもあります。
最終的には設備投資や環境や作業者の健康などを総合的に判断してご採用いただきました。
溶剤系塗料は確かに安価で乾燥も速くて優秀ではありますが、今後社会から求められる会社になるためには、環境や作業者の健康にも配慮していくことが大切です。
今後もミドリ商会では、SDGsの観点から環境や健康に配慮した商品をご提案していきます。