塗装をしていると病気になる!?有機溶剤が人体に与える影響を解説
「長年塗装作業をしているけれど、体調が悪くならないか心配…。」と不安を感じている人も多いでしょう。
塗装に付きものである有機溶剤は扱い方を間違えると、健康被害を引き起こす恐れがあります。
本記事では塗装作業が原因となる病気や健康被害についてわかりやすく解説します。
病気のリスクを下げる方法も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
塗装作業でかかる可能性がある病気
長年塗装作業に従事していると、一般の方に比べて病気になる可能性が高まります。
塗装作業が原因でかかる可能性がある主な病気は以下のとおりです。
- がん
- シンナー中毒
- 肺炎
それぞれを詳しく見ていきましょう。
がん
塗料やシンナーなどには発がん性が高い有機溶剤が含まれている場合があります。
有機溶剤は呼吸だけではなく皮膚から体内に吸収される可能性もあるため、
長年塗装作業をしている方は、がんになるリスクが高まるといえるでしょう。
発がん性が高い物質が含まれているかどうかは、塗料やシンナーのSDS(安全データシート)を確認してみましょう。
シンナー中毒
塗料を薄めるシンナーは吸い込むことで中毒症状が出ます。
主な症状は酒に酔ったような気分になる、咳込み、頭痛、めまい、吐き気などです。
シンナーは塗装に付きものであり、塗装でかかる病気の中で最も有名なのがシンナー中毒だといえます。
肺炎
塗料にはイソシアネートという成分が含まれている場合があります。
イソシアネートが体内に取り込まれると、肺炎の原因となります。
発熱、せき、息切れなどの症状が出る場合があるので、塗装作業中は防塵マスクを着用して、塗料を吸引しないようにしましょう。
■参考記事:シンナー中毒は塗装作業で起こる?症状や事例、未然に防ぐ方法を解説
塗装での病気の原因は有機溶剤
前述したとおり、塗装で起こる病気の多くは有機溶剤が原因です。
本章では有名な有機溶剤と法規制について、簡単に確認していきます。
有名な有機溶剤
病気を引き起こす原因となる有機溶剤には以下のようなものがあります。
- トルエン
- キシレン
- エチルベンゼン
- メチルイソブチルケトン
トルエンやキシレンは有名な有機溶剤ですが、近年では高い発がん性を持つエチルベンゼンやメチルイソブチルケトンが注目されています。
塗料を購入した際は、これらの有機溶剤がどれくらい含まれているのか、SDSで確認する習慣をつけておきましょう。
有機則や特化則による規制が厳しくなっている
人体の健康に影響を与える有機溶剤に関する規制は年々厳しくなっています。
有機則や特化則という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。
規制対象は随時追加されています。
エチルベンゼンは平成25年1月に、メチルイソブチルケトンは平成26年11月に追加されました。
有機則と特化則については別の記事で詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。
関連記事:有機則とは?対象となる事業者や有機溶剤取扱い時の義務について解説
関連記事:最近よく聞く『特化則』って何?? 何のための規則なのか解説致します!
実際に塗装が原因で病気となった事例
残念なことに実際に塗装が原因で病気となった事例があります。
事例を確認することで、自社での対策に活用可能です。
本章で肺炎と胆管がんの2つの事例を確認しましょう。
肺炎の事例
塗装ブースで4年間塗装作業をしていた作業者が肺炎を発症しました。
この作業者は第2種有機溶剤に該当する塗料を使用し、スプレーガンでの塗装作業を実施。
作業者は防塵マスクを付けて、局所排気装置も設置されていました。
しかし、局所排気装置とワークの間で作業をしており、塗料ミストを浴びてしまっていたのです。
その後、塗装するワークの位置を変えて、作業者が常に風上から作業できる様に対策が施されました。
参考:厚生労働省「塗装ブースにて長期間塗装作業に従事して、有機溶剤の吸引による肺炎を発症」
胆管がんの事例
塩素系有機洗浄剤を大量に使用していた印刷工場で高頻度で胆管がんが発症しているという事例があります。
この工場で働いていた従業員の胆管がんの発症率は一般的なものと比べて高頻度であり、当時大きな社会問題となりました。
塩素系有機洗浄剤に含まれるジクロロプロパンが原因とされており、25~45歳という若い年齢の人が胆管がんになってしまったという事例です。
参考:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「印刷業で多発した職業性胆管がんと関連する、発がん性候補物質の胆汁排泄を発見」
病気のリスクを下げるためには
紹介してきたとおり、有機溶剤を扱うことが多い塗装作業では病気にかかるリスクが高まります。
病気のリスクを下げるためには、以下の2点を意識しましょう。
- 作業環境測定を行う
- 環境配慮型塗料を使う
本章で2点について解説します。
作業環境測定を行う
屋内で塗装作業をしている会社では、作業環境測定を行うことが義務とされています。
病気のリスクを高める有機溶剤を扱う作業場では6ヶ月に1回作業環境測定を行い、作業現場の有機溶剤濃度を確認しなければなりません。
作業環境測定では第1から第3までの管理区分で作業場を評価します。
もし自分が働く作業場が第3管理区分であれば、大至急有機溶剤濃度を下げる対策を行いましょう。
作業環境測定の管理区分は以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:作業環境測定の管理区分って何?3つの管理区分について解説します
環境配慮型塗料を使う
近年では有機溶剤の使用量が少ない環境配慮型塗料が増えています。代表例は水性塗料です。
水性塗料は環境や人体には良いですが、これまでの設備を変える必要があり、正直なところ導入が進んでいません。
ミドリ商会では特化則対応型塗料を提案しています。
少量の特定化学物質が含まれているものの、現行設備を変更する必要がありません。
コストを抑えて病気のリスクを下げたい方にはおすすめです。
まとめ
塗装作業でかかる病気の多くはエチルベンゼンやメチルイソブチルケトンなどの有機溶剤が原因です。
病気にかかるリスクを下げるためには、まず自分の職場がどのような状態か確認する必要があります。
ミドリ商会では作業環境測定による現場確認を行い、塗装設備や塗料の見直しの提案が可能です。
塗装で病気にかかるリスクを低くしたい方は、ぜひ一度お問い合わせください。